就職困難者の失業保険300日|うつ病・適応障害の条件
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「うつ病・適応障害なら失業保険が300日」と書いた記事を、このキーワードで上位に並ぶ順に6本読みました。ベンナビ労働問題、キャリアアップステージ、退職コンシェルジュ、退職の手引き(InVitro)、taishoku-retreat、kira-boshi の6本です。6本とも、就職困難者の中身を定めた省令の条番号をひとつも書いていませんでした。
その省令を実際に開くと、列挙されているのは統合失調症・そううつ病・てんかんの3つだけで、適応障害という言葉はどこにも出てきません。「うつ病・適応障害」とひとまとめに書かれている記事を読んで準備を進めると、窓口で話が食い違います。
本記事は、就職困難者の範囲を定める条文をe-Gov法令検索のAPIで取得した原文から確認し、法律から省令へたどる順に並べ直したものです。あわせて、受給期間の末日から逆算した求職申込みの期限も計算しました。
- 就職困難者の範囲は雇用保険法施行規則第32条が定め、精神障害の中身はさらに別の省令に飛ぶこと
- 適応障害が障害者雇用促進法施行規則第1条の4第2号の列挙に入っていないこと
- 定義の柱書が「症状が安定し、就労が可能な状態にあるもの」を要件にしていること
- 300日・360日・150日が分かれる基準(雇用保険法第22条第2項)
- 就職困難者は特定受給資格者になれないという条文上の除外(第23条第2項の括弧書き)
- 受給期間から逆算した、満額もらうための求職申込みの最終期限の独自試算
結論|300日を決めるのは「手帳」か「3つの傷病名」です
先に結論を書きます。精神疾患で就職困難者として扱われるのは、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人か、統合失調症・そううつ病(そう病及びうつ病を含む)・てんかんにかかっている人のどちらかです。診断名が重いかどうかや、療養期間が長いかどうかで決まる仕組みにはなっていません。
条文は3つの法令をまたいでつながっています
就職困難者という言葉は、雇用保険法の本体には出てきません。第22条第2項は「厚生労働省令で定める理由により就職が困難なもの」とだけ書いて、中身を省令に預けています。その省令が雇用保険法施行規則第32条です。
法第二十二条第二項の厚生労働省令で定める理由により就職が困難な者は、次のとおりとする。一 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号。以下「障害者雇用促進法」という。)第二条第二号に規定する身体障害者 二 障害者雇用促進法第二条第四号に規定する知的障害者 三 障害者雇用促進法第二条第六号に規定する精神障害者 四 更生保護法(平成十九年法律第八十八号)第四十八条各号又は第八十五条第一項各号に掲げる者であつて、その者の職業のあつせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡のあつたもの 五 社会的事情により就職が著しく阻害されている者
雇用保険法施行規則第32条(法第22条第2項の厚生労働省令で定める理由により就職が困難な者)
ここでも中身は決まりません。第3号の精神障害者は障害者雇用促進法第2条第6号を指しており、その第6号は「障害者のうち、精神障害がある者であつて厚生労働省令で定めるもの」と書いてまた省令に飛ばします。3段目でようやく、具体的な条件にたどり着きます。
法第二条第六号の厚生労働省令で定める精神障害がある者(以下「精神障害者」という。)は、次に掲げる者であつて、症状が安定し、就労が可能な状態にあるものとする。一 精神保健福祉法第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者 二 統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む。)又はてんかんにかかつている者(前号に掲げる者に該当する者を除く。)
障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則第1条の4(精神障害者)
整理すると、次の順にたどることになります。
| 段 | 条文 | そこで決まること |
|---|---|---|
| 1段目 | 雇用保険法第22条第2項 | 就職困難者の日数(300日・360日・150日)を決める。範囲は省令へ委任 |
| 2段目 | 雇用保険法施行規則第32条 | 就職困難者を5類型に区分。精神障害者は障害者雇用促進法の定義を借用 |
| 3段目 | 障害者雇用促進法第2条第6号 | 精神障害者を「厚生労働省令で定めるもの」と再委任 |
| 4段目 | 障害者雇用促進法施行規則第1条の4 | 手帳の交付/3つの傷病名と、症状が安定し就労が可能な状態という要件を確定 |
「症状が安定し、就労が可能な状態」が定義そのものに入っています
見落とされやすいのが、第1条の4の柱書です。第1号と第2号のどちらに当たる場合でも、「症状が安定し、就労が可能な状態にあるもの」という条件が先にかかります。
つまり就職困難者は「重症だから日数が長い人」ではなく、「回復して働ける状態に戻ったが、就職の間口が狭い人」を指しています。制度の向きが逆に受け取られていることが多い部分です。雇用保険法第4条第3項が失業を「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」と定義していることとも整合します。
働けない状態が続いている段階では、そもそも基本手当の対象になりません。その時期にやるべきなのは受給期間の延長の申出です。手順は傷病手当金から失業保険への切り替え手順に条文つきでまとめています。
適応障害は省令の列挙に入っていません
ここが本記事の中心です。障害者雇用促進法施行規則第1条の4第2号が挙げているのは、統合失調症・そううつ病(そう病及びうつ病を含む)・てんかんの3つだけです。適応障害はこの列挙に含まれていません。
したがって適応障害の診断を受けている人が就職困難者に当たるのは、第1号の側、つまり精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合です。手帳がなく、診断名が適応障害だけであれば、第1号にも第2号にも当てはまりません。
読んだ6本の記事のうち、キャリアアップステージは「手帳を提出することで就職困難者となり受給日数が300日に延びる可能性がある」「手帳がなくても医師の診断書や意見書があれば認めてくれる自治体も存在する」と書いていました。退職コンシェルジュは3つの傷病名を挙げていましたが、根拠となる省令名は示していません。「うつ病と適応障害では扱いが違う」と書いた記事は6本の中に1本もありませんでした。
診断名は治療の経過で変わることがあります。適応障害から別の診断に変わった場合や、手帳を取得した場合は、そこで判定がやり直しになります。離職の時点で手帳がなくても、受給の手続きに入る前に取得できていれば第1号で判断されます。適応障害での退職そのものの進め方は適応障害で退職代行を使うときの注意点にまとめました。
所定給付日数の早見表【2026年版】|300日・360日・150日の分かれ目
日数を決めているのは雇用保険法第22条第2項です。算定基礎期間が1年以上あるかどうかで、まず大きく分かれます。
| 区分 | 算定基礎期間 | 所定給付日数 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 就職困難者(45歳未満) | 1年以上 | 300日 | 法第22条第2項第2号 |
| 就職困難者(45歳以上65歳未満) | 1年以上 | 360日 | 法第22条第2項第1号 |
| 就職困難者(年齢を問わない) | 1年未満 | 150日 | 法第22条第2項 |
| 一般の受給資格者 | 10年未満 | 90日 | 法第22条第1項第3号 |
| 一般の受給資格者 | 10年以上20年未満 | 120日 | 法第22条第1項第2号 |
| 一般の受給資格者 | 20年以上 | 150日 | 法第22条第1項第1号 |
この表から2点読み取れます。第一に、就職困難者の側は年齢の区切りが45歳の1本だけで、勤続年数による細かい階段がありません。一般の受給資格者は算定基礎期間で3段階に分かれますが、就職困難者は1年以上か1年未満かの2択です。
第二に、算定基礎期間が1年未満でも150日つきます。一般の受給資格者が20年勤めてようやく届く日数と同じです。転職して間もない時期に体調を崩した場合、この差は大きく効きます。
年齢の判定日は「基準日」、つまり離職の日です。誕生日が離職日の直後にある場合、離職日が1日ずれるだけで300日と360日が入れ替わることがあります。退職日を自分で選べる状況であれば、45歳の誕生日との前後関係は確認しておいて損はありません。金額の目安は失業保険計算シミュレーターで条件を入れて確認でき、計算の考え方は失業保険 計算の完全ガイドに整理しています。
就職困難者は特定受給資格者になれません
会社都合か自己都合かで日数が変わると説明する記事が多いのですが、就職困難者については、条文が特定受給資格者から明示的に除外しています。
雇用保険法第23条第2項は、特定受給資格者を「次の各号のいずれかに該当する受給資格者(前条第二項に規定する受給資格者を除く。)」と定義しています。この括弧書きの「前条第二項に規定する受給資格者」が就職困難者です。倒産や解雇で離職していても、就職困難者に当たる人は第22条第2項の日数が適用されます。
一方で、特定理由離職者のほうは除外されていません。雇用保険法第13条第3項は特定理由離職者を「第二十三条第二項各号のいずれかに該当する者以外の者」と定義しており、就職困難者を除くとは書いていないためです。心身の障害を理由に離職した人が特定理由離職者と認められれば、給付制限が付かない扱いになります。認定条件は特定理由離職者の認定条件で判定表にしています。
| 区分 | 就職困難者と併存するか | 根拠 |
|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 併存しない(条文で除外) | 法第23条第2項の括弧書き |
| 特定理由離職者 | 併存しうる | 法第13条第3項(除外規定なし) |
【独自試算】受給期間から逆算した求職申込みの最終期限
日数が長いことには裏があります。基本手当は受給期間という枠の中でしか支給されないため、日数が長い人ほど早く動かないと受け取り切れません。
受給期間を定めているのは雇用保険法第20条第1項です。第2号は「基準日において第二十二条第二項第一号に該当する受給資格者」の受給期間を1年に60日を加えた期間としています。第22条第2項第1号は45歳以上65歳未満の就職困難者なので、この60日の加算を受けるのは360日の人だけです。45歳未満の300日の人は第1号扱いで、原則どおり離職日の翌日から1年です。
そこで、受給期間の末日から必要な日数を引いて、求職の申込みをいつまでに済ませる必要があるかを計算しました。
満額受給に必要な日数 = 待期7日 + 所定給付日数
求職申込みの最終期限 = 受給期間の日数 −(待期7日 + 所定給付日数)
待期は雇用保険法第21条、所定給付日数は同法第22条第2項、受給期間は同法第20条第1項によります。1年を365日とし、失業している日が連続して続く前提の試算です。
| 区分 | 所定給付日数 | 受給期間 | 給付制限なしの期限 | 給付制限1か月の期限 |
|---|---|---|---|---|
| 算定基礎期間1年未満 | 150日 | 365日 | 離職日の翌日から208日 | 178日 |
| 45歳未満 | 300日 | 365日 | 離職日の翌日から58日 | 28日 |
| 45歳以上65歳未満 | 360日 | 425日 | 離職日の翌日から58日 | 28日 |
結果が示すのは、300日の人と360日の人で、動ける猶予がぴったり同じ58日になるということです。360日は300日より60日長く、第20条第1項第2号が加算する日数もちょうど60日だからです。第2号の60日は、日数が増えた分だけ枠を広げて猶予をそろえるための調整だと読めます。読んだ6本の記事はいずれもこの加算に触れておらず、受給期間を「原則1年」とだけ書いていました。
逆に言えば、就職困難者に認定される人ほど、離職から2か月足らずで求職の申込みまで進む必要があります。150日の区分だけは208日と余裕がありますが、300日・360日の区分では療養しながら考えている間に枠を使い切ってしまいます。
注意点を3つ挙げます。第一に、給付制限の長さは雇用保険法第33条第1項により「待期期間の満了後1か月以上3か月以内で公共職業安定所長の定める期間」で、何か月になるかは決定によります。第二に、給付制限が3か月になると必要な日数が受給期間を超えるため、同条第3項により受給期間そのものが延長されます。制限が長い場合は、逆にこの規定で救われます。第三に、基本手当は認定日ごとに支給されるため、末日ぎりぎりの計算では取りこぼしが出ます。数週間の余裕を見てください。
働けない期間がある場合は、受給期間に職業に就くことができない日数を加算して最長4年まで延ばせます(法第20条第1項の括弧書き)。この延長を申し出ておけば、58日という猶予は事実上リセットされます。猶予が短いこと自体より、延長の申出を忘れることのほうが実害は大きくなります。
認定を受ける手順|条文に様式の定めがない理由
ここで正直に書いておきます。雇用保険法にも同法施行規則にも、就職困難者の認定手続きや提出様式を定めた条文はありません。施行規則第32条は対象者の範囲を書いているだけで、どう確認するかは書かれていません。
この「条文にない」という事実には、実務上の意味があります。手帳の写しで足りるのか、主治医の意見書が必要なのか、その様式はどれかは、法令ではなく窓口の運用で決まっているということです。調べた記事の中には「診断書ではなくハローワーク所定の意見書が必要」と書くものもありましたが、その様式を定めた省令は見当たりませんでした。「全国一律のルール」として書かれている手順を、そのまま前提にしないほうが安全です。
そのうえで、条文から確実に言える順序は次のとおりです。
- 離職票を受け取る——受給資格の決定に必要です。会社から届かない場合の対処は離職票が届かないときの請求手順にまとめています。
- 働ける状態かを主治医と確認する——障害者雇用促進法施行規則第1条の4の柱書が「症状が安定し、就労が可能な状態」を要件にしているためです。
- 働けない場合は先に受給期間の延長を申し出る——雇用保険法施行規則第31条第3項により、30日以上働けない状態に該当した日の翌日から申し出られます。
- 求職の申込みをする——この日が受給資格決定日になり、雇用保険法第21条の待期7日がここから始まります。
- 就職困難者に当たることを窓口に申し出る——必要書類は事前に管轄のハローワークへ電話で確認します。
持ち物の一般的な範囲はハローワークの職業相談に必要な持ち物で整理しています。待期と給付制限の数え方は失業保険の待期期間7日と給付制限の起算日で扱っています。
傷病手当金との順番|先に受け取るのはどちらか
結論を先に書くと、働けない間は傷病手当金、働ける状態に戻ってから基本手当という順番になります。選べるわけではなく、要件が裏返しになっているため自動的にこの順になります。
健康保険法第99条第1項の傷病手当金は「療養のため労務に服することができないとき」に支給され、雇用保険法第4条第3項の失業は「労働の意思及び能力を有する」ことが前提です。同じ日に両方の状態であることはありえません。
就職困難者の判定にとって重要なのは、この順番が判定のタイミングも決めるという点です。就職困難者は「症状が安定し、就労が可能な状態」の人を指すので、傷病手当金を受け取っている段階では、まだ就職困難者としての判定を受ける場面になりません。療養中に焦って窓口へ行く必要はなく、先に受給期間の延長を確保しておけば足ります。
切り替えの実務は傷病手当金から失業保険への切り替え手順に、退職後も傷病手当金を受け続ける要件は傷病手当金は退職後も継続受給できる条件にまとめています。うつ病で退職を進める場合の全体像はうつ病で退職代行を使うときの進め方を参照してください。
就職困難者に当てはまらないときの3つの受け皿
適応障害の診断だけで手帳がない場合、300日の枠には届きません。ただし、日数以外で効く制度が3つあります。
受け皿1:特定理由離職者として給付制限をなくす
前述のとおり特定理由離職者は就職困難者と併存できます。心身の障害を理由とする離職が認められれば、雇用保険法第33条第1項の給付制限が付きません。日数は増えませんが、受け取り始める時期が1か月以上早くなります。判定は特定理由離職者の認定条件で確認できます。
受け皿2:訓練延長給付で実質的に日数を伸ばす
公共職業訓練を受講指示で受けると、受講期間中は基本手当が延長されます。根拠は雇用保険法第24条です。就職困難者に当たらない人でも使える点が大きな違いです。条件と早見表は職業訓練で失業保険を延長する条件にまとめています。
受け皿3:常用就職支度手当の「就職が困難な者」は範囲が違う
同じ「就職が困難な者」という言葉でも、制度によって範囲が違います。雇用保険法施行規則第82条の3第2項は、常用就職支度手当の対象となる就職が困難な者を7号まで並べ、第7号で第32条各号の者を取り込んだうえに、45歳以上の再就職援助計画の援助対象労働者や高年齢支援対象者などを加えています。所定給付日数を増やす制度ではありませんが、第32条で外れた人が別の号で拾われることがあります。
給付金の受給サポートを使うべきかどうか
ここまでの手続きは、すべて本人がハローワークと健康保険の窓口で完結できます。手数料を払って外部に依頼しなければ通らない手続きは、この流れの中にはありません。とくに就職困難者の判定は、手帳の有無と診断名という客観的な事実で決まる部分が大きく、交渉の余地がある領域ではありません。受給サポートをうたうサービスの実態と判断基準は社会保険給付金サポートは怪しいのかで個別に検証しています。契約を検討している場合は、先にそちらを読んでください。
よくある質問
Q1. 適応障害でも就職困難者として失業保険を300日もらえますか?
精神障害者保健福祉手帳を持っていれば対象になります。手帳がない場合は難しくなります。就職困難者の範囲は雇用保険法施行規則第32条が定め、その第3号の精神障害者は障害者雇用促進法第2条第6号を指します。中身を定める同法施行規則第1条の4は、第1号で手帳の交付を受けている者、第2号で統合失調症・そううつ病(そう病及びうつ病を含む)・てんかんにかかっている者と規定しており、適応障害は第2号の列挙に含まれていません。
Q2. 就職困難者の所定給付日数は何日になりますか?
雇用保険法第22条第2項が定めています。算定基礎期間が1年以上の場合、離職日において45歳未満なら300日、45歳以上65歳未満なら360日です。算定基礎期間が1年未満の場合は年齢にかかわらず150日です。一般の受給資格者は同条第1項により算定基礎期間10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日なので、いずれの区分でも就職困難者のほうが日数は多くなります。
Q3. うつ病が重いほど給付日数は長くなりますか?
長くなりません。むしろ逆の構造です。障害者雇用促進法施行規則第1条の4の柱書は、就職困難者に当たる精神障害者を「症状が安定し、就労が可能な状態にあるもの」と定めています。加えて雇用保険法第4条第3項は失業を「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」と定義しています。働けない状態が続いている間は基本手当そのものを受け取れないため、まず受給期間の延長を申し出るのが順序です。
Q4. 就職困難者は特定受給資格者にもなれますか?
なれません。雇用保険法第23条第2項は特定受給資格者を定義する際に「前条第二項に規定する受給資格者を除く」と括弧書きで除外しており、就職困難者は定義上そもそも特定受給資格者に含まれません。ただし特定理由離職者は別で、同法第13条第3項は第23条第2項各号に該当する者以外を対象としているため、就職困難者が特定理由離職者に当たることはあります。
Q5. 就職困難者の受給期間は何年ですか?
年齢によって2種類に分かれます。雇用保険法第20条第1項第2号は、離職日において第22条第2項第1号に該当する受給資格者、つまり45歳以上65歳未満の就職困難者の受給期間を1年に60日を加えた期間と定めています。45歳未満の就職困難者は第2号に当たらないため、第1号の原則どおり離職日の翌日から1年です。病気などで引き続き30日以上働けない場合は、その日数を加算して最長4年まで延長できます。
Q6. 就職困難者の認定にはハローワーク指定の様式が必要ですか?
雇用保険法にも同法施行規則にも、就職困難者の認定手続きや提出様式を定めた条文はありません。施行規則第32条が対象者の範囲を定めているだけで、確認の方法は窓口の運用に委ねられています。そのため手帳の写しで足りるのか、主治医の意見書の様式が用意されているのかは管轄のハローワークに事前に確認するのが確実です。
Q7. 就職困難者に該当しない場合、ほかに日数が増える制度はありますか?
常用就職支度手当の対象は就職困難者より広く設定されています。雇用保険法施行規則第82条の3第2項は、第7号で第32条各号の者を取り込んだうえで、45歳以上の再就職援助計画の援助対象労働者や高年齢支援対象者などを加えています。所定給付日数そのものを増やす制度ではありませんが、同じ「就職が困難な者」という言葉でも制度ごとに範囲が違う点は確認しておく価値があります。
ハローワークへ行く前に確認する3つのこと
就職困難者の判定は、窓口で初めて確かめるものではありません。手元の書類だけで、ほぼ答えが出ます。
- 精神障害者保健福祉手帳の有無——あれば診断名を問わず第1号で判断されます。
- 診断書に書かれている傷病名——統合失調症・そううつ病・てんかんのいずれかに当たるかを確認します。
- 離職日の年齢と、雇用保険の加入期間が1年以上あるか——300日・360日・150日の分かれ目です。
3つ目でつまずくケースがあります。退職の話が長引いて離職日が動くと、45歳の区切りや加入期間1年の区切りをまたぐことがあるためです。会社が退職日を先延ばしにしてくる、あるいは連絡自体が負担で話が進まないという状態なら、窓口を外部に移して日付だけ先に確定させる方法があります。
退職代行Jobs(27,000円・税込)は合同労働組合ユニオンジャパンと連携しており、退職日の調整や離職票の請求まで会社との連絡を代わりに行えます。24時間365日、LINEとメールで相談を受け付けています。
休職期間の扱いや未払い賃金の請求まで争点になる場合は、弁護士法人ガイア法律事務所(25,300円〜・税込)が対応範囲を広く取れます。
- e-Gov法令検索「雇用保険法(昭和49年法律第116号)」(第4条第3項・第13条第3項・第20条第1項・第21条・第22条・第23条第2項・第33条)
- e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」(第31条第3項・第32条・第82条の3第2項)
- e-Gov法令検索「障害者の雇用の促進等に関する法律」(第2条第6号)
- e-Gov法令検索「障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則」(第1条の4)
- e-Gov法令検索「健康保険法(大正11年法律第70号)」(第99条第1項)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の手続き」
※本記事は2026年9月6日時点の法令に基づきます。条文はe-Gov法令検索のAPIで取得した原文を確認して引用しています。逆算期限の試算は雇用保険法第21条の待期7日と同法第22条第2項の所定給付日数、同法第20条第1項の受給期間をもとに編集部が算出したもので、1年を365日とし、失業している日が連続する前提です。給付制限の長さ・不支給日・訓練受講の有無により実際の期限は変わります。就職困難者に当たるかどうかの最終的な判断は、管轄の公共職業安定所が行います。
